自然とデジタルが調和する北海道の逸材発掘プロジェクト

塾長のごあいさつ

塾長挨拶

学校教育との相乗効果を経て不思議を追求することができる人材を育てていきたい

 皆様におかれましては、平素より旭川高専ならびに北海道ジュニアドクター育成塾への格別のご理解と支援を賜り、誠にありがとうございます。

 旭川高専では、JSTの委託を受けて2019年度より北海道で初めてとなるジュニアドクター育成塾を企画・運営させていただいております。学校教育とは違った切り口で子どもたちを育て、科学に関する純粋な気持ち、興味関心を語ることができ、学校教育との相乗効果を経て不思議を追求することができる人材を育てていきたいと考えております。

 これまでの5年間で、小学5年生から中学3年生まで、全道各地から185名の受講生を受け入れました。いづれの年度も講座の出席率8割以上、科学に対する興味関心が非常に高い特徴を持つ子どもたちでした。大きな成果として、①科学の興味関心などの資質能力の伸長を自分の言葉で表現できたこと、②グループ活動や施設見学を通じてコミュニケーション力を育成できたことです。そして、第二段階プログラムに選抜された39名が、研究活動を行いました。その成果は③受講生の興味関心に合わせた研究活動を展開でき研究遂行能力 などの資質能力を養えたことです。

 第一段階教育プログラムの体験型講座は、対面とオンラインが選択できるハイブリッド形式で行ってきました。オンライン希望者には、実験キットを送付し、自宅で実験を行うことができるよう工夫を行いました。対面の受講生とオンラインの受講生が、画面越しに子どもたち同士で積極的に交流する姿がありました。場所を問わず受講生は積極的で学ぶ姿勢が素晴らしいという印象を強く受けています。そして、その陰にはグループディスカッション等を支えたメンター(旭川高専の学生)の協力があり、彼らの力が非常に大きいことを実感しました。また、施設見学は、一泊二日の工程を実施し、宿泊を伴う旅行では、講座以外の自由な時間が多くあるため子供たち同士の「興味の連鎖」と「他者との交流」が自然と起き、興味関心・コミュニケーション能力などが養われました。

 また、第二段階教育プログラムでは、受講生が科学に向き合う真摯な姿勢を感じました。受講生の興味関心にできるだけ近い分野の教員を指導者とし、メンターのサポートのもと研究を進めました。その結果、自ら設定した研究を進め、小学生・中学生とは思えない考察の深さで、彼ら自身の成長と科学を楽しむ姿勢がしっかり伝わってきました。

 我々は本事業の授業設計共通方針として「教えすぎない」「他人に自分の考えを伝える」「わからないことを楽しむ」といった姿勢を貫いてきました。その思いが伝わり、成果発表会では自分の成長や将来やってみたいことを自分の言葉で対面または画面越しに緊張しながらも楽しそうに語っていました。子どもたちの成長には驚かされるばかりです。本事業の受講生は、ただ楽しかったではなく、答えのない問題にどのように取り組めばよいか、不思議、もう少し考えたい、あれどうなっているのだろうと自ら学ぶ姿勢をしっかり身に着けていることを感じました。

 我々は受講生の学校での学業成績をまったく知りませんが、受験勉強等で科学的関心が薄れる前に、最先端の科学や工学を子どもたちに早期に伝え、将来の目標を持つ意義は大きいと思います。各所で行われている科学イベントでの科学の楽しさを知る機会に加え、専門家を交え継続的に科学の不思議を考える力を養うことで、卓越した人材につながることを期待しています。

 このたび、2024年度には、新しいプログラム「自然とデジタルが調和する北海道の逸材発掘プロジェクト『北海道ジュニアドクター育成塾2.0』」として、新たにJSTの「科学技術チャレンジプログラム」小中型として5年間継続して支援をいただくこととなりました。関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

 本事業を遂行するにあたり、教育関係者や記者および企業の皆様からも激励をいただきました。心より御礼申し上げます。また、受講生の保護者の方からお礼のメッセージを複数いただきました。本当にありがたく、支えてくださる皆様のご期待に応えるよう精一杯頑張ってまいります。今後も一層のご支援を賜りますようお願い申しあげます。

令和6年7月
北海道ジュニアドクター育成塾長
旭川工業高等専門学校 篁(たかむら)耕司